

興奮は冷めない。自然と熱を帯びた。
ラグビー日本代表ロックのトンプソン・ルーク(38=近鉄)が、26日に行われた「NPBアワード2019」のプレゼンターとして壇上に登場。自国開催19年ラグビーW杯で日本を史上初のベスト8に導いた「トモさん」が血豆で固まった分厚い手を握る。
幾度なく歴戦を繰り返した勇者らの空間に、言葉は要らなかった。
「すごい楽しかったのと、メッチャうれしいね!野球は1番人気のスポーツ、日本で。だからホント誇りに思います」
ベストナインを受賞した広島鈴木やオリックス吉田正らと真っすぐに目を見て、握手を交わした。「良い感じね。野球もラグビーもチームスポーツ。ちょっと同じ感じ。(表彰台では)ベスト選手と。チョットの時間だったけど、すごいうれしいね!」
W杯4大会連続出場という功績をもつレジェンドは、今季限りで現役引退を表明。24日には、14年間過ごした近鉄の本拠地である花園でのラストゲームを戦い「花園は特別な場所。寂しいけど、また花園に戻ります」と誓ったばかり。筋の通った鼻はゆがみ、顔や体は傷だらけ。それでもNPBアワードに駆けつけた理由がある。「ラスト(ここ)10年間ぐらいで10試合(観戦に)行きました。あと時間があるときは、時々テレビで(野球を)見てます」。住むうちに、日本文化を好きになった。
囲み取材の冒頭では「まず、みんなごめんね。僕の日本語あまりよくないね」と冗談まじりに場を沸かせる。うまく聞き取れない質問が出たときは「ゴメン!もう1回、言って? 」と笑顔で聞き返す。
にこやかに話す。すると突然、声のトーンが上がった。「(京セラ)ドームは何回か、2回? 3、4回かは行ったよ!まだ、甲子園は行けなかった。まだね。行きたいよ!すごい。(甲子園は)夢の場所だから」。
トンプソンの言う通り、甲子園が野球少年たちの夢の場所なら、花園もラガーマンたちの夢の場所である。いついかなるときも、ひたむきに-。100%以上の力で勝利を目指すから、観客は拍手を送る。だから、スポーツは心を突き動かす。【真柴健】