

「とにかくスタートが肝心だぞ!と、これだけは強く伝えました」
ドラゴンズ大島洋平選手が、新天地へ向かう仲間へ向けた言葉。特にかわいがっていた後輩たちへ。
2019年6月30日。ドラゴンズ今季初の5連勝、しかも新体制初のサヨナラ勝ちの歓声からわずか3時間後の日曜の晩、オリックスバファローズとのトレードが発表。松井雅人捕手と松井佑介外野手、オリックス松葉貴大投手と武田健吾外野手による2対2のトレード。そしてスティーブン・モヤ外野手の金銭トレード。既に新チームでの背番号も発表され、即一軍戦力としての両チームでの活躍が期待されている。
トレードという響きには、自分が少年ドラゴンズ会員だった幼少期、大好きだった田尾安志さんや牛島和彦さんらの電撃トレード発表の衝撃が、未だに付いてまわり、忘れられない。
ミズノ社製の外野用の田尾モデルグローブを抱いて寝ていた自分にとって、ショック以外なく、西武ライオンズの一員としてナゴヤ球場へ帰ってきた時は、レフトスタンドの最前列に陣取った。牛島さんのトレードの時は、三冠王がドラゴンズにやってくる楽しみよりも、4対1という数の人生が動くという事実に、プロ野球の勝利のためのシビアさを痛感した。
ただ、だからこそ、牛島さんはセパ両リーグでリリーフのタイトルに輝くことができ、引退後はベイスターズの監督就任、前年最下位のチームを初年度でAクラスに導きました。自身のケガの苦しみや克服法をセパの若手に伝え続けたことも、ドラゴンズ一筋とはまた違った幅広い評論家活動に滲み出ている。
もちろん、今回のトレードは、同じドラゴンズとはいえ、実績も時代も異なる。かつて、セ・パ4球団に渡ってプレーした与田剛監督も明言。
「5人が少しでも試合に出られるよう、時間をかけて球団と判断した」

ドラゴンズ、アリガトウ
それが分かっていても、ファンは、もうドラゴンズのユニフォーム姿がもう見られないことには、感傷的になる。
来日わずか1年半のモヤ選手は、とにかく日本語を覚えるのが早かった。ナゴヤ球場に別れを告げる際、グラウンドに向かって、日本式のお辞儀を深々とした。
「ドラゴンズ、アリガトウ」と。
ファンへの感謝と外国人枠の悔しさを胸に秘め、新天地へ向かったモヤは、移籍会見直後に即練習合流、なんとスタメン初打席でホームラン。
あのラルフ・ブライアントばりの引っ張りで特大本塁打を放ち、新本拠地を沸かせた。